飛行機で最も安全な席はどこ?生存率が高い席を紹介
更新日:2025年9月24日
旅行やビジネスの移動手段として飛行機が日常的に使われるようになった現代。LCC(格安航空会社)の台頭もあって飛行機の利用者数は増加傾向にあります。しかし、航空事故に対する恐怖心を抱く人もいまだに多く、座席を選ぶ際も、できるだけ安全性を重視したいという声もよく聞かれます。飛行機の中で安全とされている席はどこなのか。座席ごとの特徴とあわせて紹介します。
目次
- 飛行機で“絶対に安全な席”はない
- 大前提、飛行機は安全な乗り物
- 飛行機で安全な席は前方?後方?
- 後方席は生存率が高く、比較的安全
- 非常口に近い席も生存率は高い
- 通路側・中央・窓側、それぞれの特徴
- 飛行機に乗る前に知っておきたい安全対策
- 安全ビデオや避難経路を確認する
- 離着陸時は必ず靴を履いておく
- 避難時、荷物は絶対に持たない
- 乗務員を信じて飛行機に乗ろう
- 飛行機の座席に関するよくある質問
- 非常口に近い席は安全ですか?
- まとめ
飛行機で“絶対に安全な席”はない
国内外でごくまれに航空事故が起きると、テレビのニュースなどでは、どの席に座っている人が無事であったかと報じられることがあります。その影響もあって、「◯◯の席が絶対に安全」と捉えがちですが、航空事故には様々なパターンがあり、機体破損や火災の規模も状況に応じて変わってきます。そのため、絶対に安全な席を結論づけることはほぼ不可能で、詳しい専門家でさえも明言は避けています。
大前提、飛行機は安全な乗り物
大規模な航空事故は記憶の風化を防ぐため、たびたびメディアで過去の事例として紹介されます。それによって飛行機=危険と考える人も一定数いますが、これまでのデータを分析すれば、実は飛行機が数ある移動手段の中で特に安全性が高いことがうかがい知れます。飛行機の安全と運用を専門に研究するマサチューセッツ工科大学教授のアーノルド・バーネットは、2018~22年における航空事故での死亡率は「1370万回搭乗して1回」と記しています。1968~77年のデータでは「35万回の搭乗につき1回」だったので、時代が経つごとにその安全性が高まっていることが確認できます。なお、自動車運転での死亡率はおよそ100分の1といわれており、その差は歴然です。
飛行機で安全な席は前方?後方?
前の項目では飛行機内で「絶対に安全な席」は確定できないとしていますが、「比較的安全とされる席」については、過去の航空事故を元にしたデータから割り出されています。分析結果を比較すると席ごとの特徴が見えてきます。
後方席は生存率が高く、比較的安全
アメリカのニュース誌「TIME」と技術専門誌の「Popular Mechanics」では、1980~2015年で発生した航空機墜落のデータを分析した結果、翼よりも後方、特に最後尾の中央席に座っていた人の生存率が統計的に高かったと発表しています。機体急降下時の衝撃を直接受けやすい前方部や、燃料が集中し火災の中心になる中央部から少し距離がある後方部分が比較的安全とされるほか、事故の衝撃で後方部分が切り離されて無事なケースもあり、さらに後方中央席は、左右に座っている人がクッションの役割を果たし、衝撃を和らげるともいわれています。墜落時に体にかかる重力加速度(G)は前方で12G(重力の12倍)、中央部が8G、後方から最後尾にかけては6Gとなっています。ジェットコースターが4G程度といわれているため、前方部はその3倍。即座に意識を失い、呼吸困難にも陥ります。死につながる恐れがある前方部と比べると、6Gまで抑えられる後方部の方が生存率が高いと考えられています。
非常口に近い席も生存率は高い
飛行機によって場所が異なる非常口ですが、非常口に近い席は事故の際に脱出しやすく、避難できる確率が高まります。イギリスのグリニッジ大学も航空事故の研究で「非常口から5列以内の席に座っていた人の生存率が最も高かった」という結果を発表しています。ただし、中央部の席では真下にガソリンタンクが配置されていることが多く、火災が発生した場合は危険の度合いが高まることもあるため、一概に安全とは言えません。
通路側・中央・窓側、それぞれの特徴
座席を横並びで見た時、通路側・中央・窓側で種類が分けられ、それぞれの座席で緊急時におけるメリット、デメリットが異なります。
| 座席 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 通路側 | 緊急時に身動きを取りやすい | 落下する荷物や飛んできた破片に当たりやすい |
| 中央席 | 左右に座っている人がクッションの役割を果たし、衝撃を和らげる | 窮屈で身動きが取りにくい |
| 窓側 | 外の状況を確認しやすい | 避難時は他の人を待つ必要があり脱出が遅れる |
安全面から鑑みると通路側の席は緊急時にすぐ移動できることがメリットですが、落ちてくる荷物や飛んでくる破片に当たりやすいという危険性があります。中央席は左右の人がいることで緊急時の衝撃が和らげられる効果があります。しかし、窮屈で身動きが取りづらいこともあり、通常はあまり人気の高い席ではありません。窓側の席は外の状況を確認しやすい反面、避難時には通路側の人が優先になるため脱出に時間がかかってしまうデメリットがあります。
飛行機に乗る前に知っておきたい安全対策
航空事故があった際の乗客の被害の差は、座席の位置だけに限らず、どれだけ入念に安全対策をしていたかによって変わってきます。そのため、飛行機の搭乗前にやっておきたい準備について紹介します。
安全ビデオや避難経路を確認する
飛行機では離陸前に緊急時の対応を説明する安全ビデオが上映されます。頻繁に飛行機を利用する人であれば、同じ説明を何度も聞くことが億劫になり、安全確認も怠りがちです。しかし、飛行機の機体はすべてが同じ作りであるということはなく、救命胴衣が収められている位置や非常口の数、ドアの開閉の仕方などがそれぞれ異なってきます。その違いを把握するためにも安全ビデオの説明は見過ごさないようにしましょう。また、火災で機内に煙が充満し、視界が奪われると脱出に影響を及ぼします。自分の席から非常口までの経路を確認し、不測の事態でも落ち着いて行動できるようにしておきましょう。
離着陸時は必ず靴を履いておく
航空事故は離陸直後の3分間、着陸前の8分間に多発するといわれており、航空業界では、この時間を「魔の11分」と呼んでいます。事故が発生すると機内にガラスや金属の破片が散乱するため、素足での脱出は大ケガの原因になってしまいます。そのため、この「魔の11分」の間は足元を楽にしたいからとスリッパなどに履き替えないようにしましょう。靴の種類もサンダルなどは動きにくくなるので危険です。また、緊急脱出スライドの利用時はハイヒールの着用が禁止されています。飛行機に搭乗する際の靴は足元がしっかり覆われ、かかとがあまり高くないものを選びましょう。
避難時、荷物は絶対に持たない
事故発生時、90秒以内に乗客と乗務員全員の脱出を完了させる「90秒ルール」というものがあります。これはアメリカ連邦航空局が制定した基準で、国際的なルールとして世界各国の航空会社が追随しています。この90秒ルールを実現させるために重要なポイントは、機内から脱出する際に手荷物を持たないことです。手荷物を持つと通路や出口を塞いでしまい、自分だけでなく他の人が逃げられなくなる可能性が高まります。スマートフォンや財布などの貴重品は服のポケットに入れておくことで、避難時にカバンから取り出す、取りに戻るといった時間のロスを防ぐことができます。
乗務員を信じて飛行機に乗ろう
航空事故などの緊急事態が発生すると一時的に機内がパニック状態に陥りますが、客室乗務員は、そのような状況下で乗客の命を守るために避難訓練、火災対応訓練、応急処置研修などを定期的に受けています。有事の際は、まず客室乗務員の指示に従うことが安全確保に繋がります。避難や脱出については機長の指示が優先されますが、火災を見つけた際の初期消火や報告などは客室乗務員が対応します。また、仮に機長が意識を失う、連絡が取れないなど、重大な局面では客室乗務員が独自で判断して乗客を避難させることがあります。
飛行機の座席に関するよくある質問

非常口に近い席は安全ですか?
非常口近くの席は、航空事故が発生した際、いち早く脱出して火災や煙に巻き込まれることが避けられるため生存率が高くなるといわれています。しかし、場合によっては非常口の解放や乗客の制止など、避難の援助を頼まれることがあります。
まとめ
今回は、航空事故が発生した場合に安全度が高いとされる席について紹介しました。飛行機での旅行に慣れていない人にとっては、こういったデータが不安を解消する材料となり、参考にすることで座席選びをスムーズに行えるでしょう。日頃から飛行機をよく利用している人であれば、どの席でも快適に過ごすことができると思われますが、それでも安全への配慮を怠らず、緊急時での対応を把握しておくことが望まれます。